ルカイ(魯凱族)

 台東県東與村、屏東県霧台郷、高雄県茂林郷に、約1万1千人のルカイ(魯凱族)が居住している。貴族と平民の制度があり、貴族は土地制度や経済上での特権のほか、華やかな服装と刺青で身を飾る権利があった。平民は貴族にゆるされなければ刺青することができなかった。階級は通常人名によって見わけることができた。噛まれたあと百歩で死亡するといわれる猛毒をもつ百歩蛇(ひゃっぽだ)を、頭目は先祖とあがめていた。集会所制度がある父系社会で、伝統的には長男の継承権が重視された。それは、周囲にプユマやパイワン、アミなど有力な民族と割拠していたゆえ、強力な軍事組織が必要だったためと考えられている。加入式をすませた少年は、すべての時間を集会所で厳格な規則を守りながら過ごし、年長の男性から指導と訓練を受けた。

 パイワンとルカイは非常に文化的に共通点が多く、同じ九スレートでつくった石造りの家屋に住むほか、親戚関係も緊密に結ばれている。差異としては、白百合の花がルカイのシンボルで、女性にとっては貞節を、男性にとっては狩猟の勇士であることを示すことが目立つ。現在でも人々は好んで白百合を身につけ、服に刺繍をほどこす。パイワン同様にトンボ玉を重視し、家宝として伝えてきた。

文責:山本芳美